マーチンゲール法と言えば、なんとなく聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか?
恐らく世界でもっとも有名なカジノゲームの攻略法で、投資の世界などでも有用と言われています。
今回は現役カジノディーラーとして、マーチンゲール法で破産した人も数多く見てきた経験を持つ筆者がマーチンゲール法について解説していきます。
マーチンゲール法の原理
マーチンゲール法は、ギャンブルで負けた場合に、その負け分を取り戻し、収支をプラスにするために賭け金を増していく手法です。
簡単に言えば、どれだけ負けても勝つまでやり続ける!気合の入ったギャンブルのやり方がマーチンゲール法です。
バカラのPLYER(プレイヤー)に賭けてマーチンゲール法を使った例
バカラのプレイヤー側は勝てば賭け金が2倍になるギャンブルです。
ここへ100円を賭けたとします。
そうすると、
・勝てば収支は+100円
・負けると収支は-100円
です。
残念ながらここで負けてしまい、収支は-100円になりました。
この時マーチンゲール法では、1度目に負けた時点で2度目の賭け金を倍の200円にします。
そうすると、
・勝てば、元の収支-100円と2回目のゲームで勝った200円の合計で収支は+100円
・負けたら、元の収支ー100円と2回目のゲームで負けた-200円の合計で収支は-300円
また負けてしまいました。
3回目の賭け金はマーチンゲール法に基づいてさらに倍の400円になります。
そうすると、
・勝てば、元の収支-300円と3回目のゲームで勝った400円の合計で収支は+100円
・負けたら、元の収支ー300円と2回目のゲームで負けた-400円の合計で収支は-700円
ここでも負けてしまいました。
次の賭け金はさらに倍の800円です……
回数 | 結果 | 賭け金 | 結果 | トータルの損益 |
1回目 | 負け | 100円 | -100円 | -100円 |
2回目 | 負け | 200円 | -200円 | -300円 |
3回目 | 負け | 400 円 | -400 円 | -700円 |
4回目 | 負け | 800円 | -800円 | -1,500円 |
5回目 | 負け | 1,600円 | -1,600円 | -3,600円 |
6回目 | 負け | 3200円 | -3,200円 | -6,300円 |
7回目 | 負け | 6,400円 | -6,400円 | -12,700円 |
8回目 | 負け | 12,800円 | -12,800円 | -25,500円 |
9回目 | 負け | 25,600円 | -25,600円 | -51,100円 |
//// | /// | /// | /// | /// |
?回目 | 勝ち | +100円 |
といった具合に賭け金が雪だるま式に増えて行くのがマーチンゲール法です。
カジノゲームにおいて、勝つ確率が0%でないならやり続けていればいつか勝つだろうという考えがこの理論の元になっています。
マーチンゲール法は勝てるのか?
確かに、賭け金が増えて行くことに耐えられるだけの資金があるのであれば、マーチンゲール法は無敵だと言えるでしょう。
無限にゲームを行った場合に、永遠に勝てないギャンブルは理論上あり得ないためです。
流石は世界一といったところでしょうか。
しかし、マーチンゲール法をカジノで実践するには大きな障害が2つあります。
本当に無限の資金を用意できるのか?それだけのリスクを冒せるのか?
第一に、無限の資金を本当に用意できるのかという点が挙げられます。
先ほどご紹介したバカラのPLYER側に賭け続けた場合のシミュレーションをすると、
例えば14回負けた時点で賭け金は1638400円まで行ってしまいます。
それだけのリスクを冒しても、トータルで見ると100円の勝ちです。
リスクとリターンがそこまで行くと合わなさ過ぎています。
そこまでなってしまったときに、平常心を保ちながら大金のリスクを冒して100円を掴みに行くというのは並大抵のメンタルでは出来ないでしょう。
まあ、バカラのPLYER側が14回負け続ける確率は約0.025%なので、そう起こるものではないですが…
テーブルのリミットの存在
そもそもテーブルリミットに達してしまって、倍々で賭け続けることが出来ないという問題もあります。
テーブルリミットとはどのゲームにも存在する最小の賭け金と最大の賭け金の設定を指します。
例えば、Min$100,Max$3000と書かれたテーブルがあった場合、最低でも100ドル以上でないと賭けを行えず、反対に3000ドルを超える賭けをそのテーブルでは出来ないようになっています。
カジノでは、様々な客のニーズに応えるために、同じゲームでもテーブルリミットの違う台を基本的においています。
しかし、現実に青天井で勝負!なんてことは無く、どこかでマーチンゲールの終わりが訪れるようにできているのです。
また、実際にマーチンゲール法を実践してみると、テーブルリミットの都合上テーブルを頻繁に移動する必要性が出てきますが、そう都合よくどのレートのテーブルも空いているというカジノも少なく、そのために複数のテーブルの座席を確保するのはマナー違反なので避けましょう。
マーチンゲール法の由来
条件次第では無敵のマーチンゲール法ですが、実際にカジノで実践するのは狂気じみているということがお分かりいただけたと思います。
では、マーチンゲール法の発祥はどこなのでしょうか?
諸説ありますが、その昔変わり者が集まると評判だった南フランスのマーティギューという地方があり、ここの出身者が好んでこの賭け金が倍々になる賭け方をして散々な負け方をしていたそうです。
そこからて「マーチィギューシステム」→「マーチンゲール法」となりました。
人の名前では無く、地方の名前だったんですね!
本当にあったマーチンゲール法の怖い話
実際にカジノで働いていた時に遭遇したマーチンゲール法の怖い話を最後にお伝えしたいと思います。
当時私はカジノのスーパーバイザーとしてとある欧米のカジノへ勤務していました。
スーパーバイザーは、ディーラーを監視するとともに、進行でトラブルがあった際などに可能な範囲で対応することが求められます。
その時はルーレットのテーブルを見ていたのですが、明らかに熱くなってるアジア風の女性が1人いました。
どうやら見る限りカジノ初心者のようで、ルーレットのルールがシンプルなのでルーレットを選択している様子。
最初は当たれば賭け金と同じ額の配当が出る赤 or 黒に賭けていました。
見ていると、マーチンゲール法を自然に実践していて段々と賭け金が倍々になっているのがわかります。
最初のほうは勝ったり負けたりを繰り返していましたが、途中から連続で負け始めました。
負け額が1000ドルを超えたあたりで、あろうことか彼女はストリートという勝てば11倍の配当が出る(11 to 1)賭け方にシフトチェンジしました。
明らかに負けを一発で取り戻そうとして平常心を失っているのが分かります。
要は、彼女の残り資金では赤黒で倍の配当を手に入れても取り返せない額をこの時点で負けてしまっていたのです。
恐らく残り800ドルといったところでしょうか。
しかし、頼みの綱のストリートベットもあえなく撃沈。
赤黒を連続で外している人が、そう都合よく8%ほどしか出ないストリート賭けを成功するとはその場も誰も考えませんでした。
そこからさらにギャンブル性の高いスプリット(勝てば17倍の配当)、ストレートアップ(勝てば35倍の配当)でないと取り返せないような金額に追い込まれ、当然破産。
最後は死にそうな顔をしながら残った少額でスロットマシンのエリアへ行き、恐らく溶かしたのでしょう。
すぐルーレットのエリアへ戻ってきて恨めしそうにルーレットのテーブルを眺めた後、夫と思われる男が来て、彼女は怒られながら連れて帰られました。
これに似たようなことをして、最後はタクシー代すらなくなってしまうような人がカジノにはたくさんいます。
マーチンゲール法を実践してしまうと、このように正常な判断が出来なくなり、失う金額もきりがなくなってしまいます。
魅力的な配当の賭け方も用意されているがゆえに、最後の最後まで夢だけは見させてくれるのがカジノです。
そのため、カジノで遊ぶときに、特に初めのうちは決められた金額以上は使わない、周囲に止めてくれる友人などがいる状態で行くことを強くお勧めします。